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音楽の印税インフラに隠れたコスト

音楽は、印税を扱う機関を動かし続けるための請求書を払い続けている。数学には、それがいらない。

Brian Li

· 8分で読めます

1 + 1はいくつだろう。

あなたは調べなかった。誰かに電話もしなかったし、郵便で明細が届くのを待ちもしなかった。答えを教えてくれる相手が、信頼できるほど大きいかどうかも気にしなかった。2だとわかっていたし、自分で確かめることもできた。誰でも、どこでも、無料で同じ答えにたどり着く。

では、アーティストやソングライター、レーベルや出版社が、1回のストリームについて正しく支払われたと信じるには、何が必要だろう。彼らは何も確かめない。機関を信頼する。そして機関を信頼することには、音楽業界全体が毎月お金を払っている。請求書が目に入るかどうかに関係なく。この記事は、その請求書の話だ。

信頼には維持費がかかる

ストリームや販売のお金は、2組の権利者に届かなければならない。録音の権利者と、楽曲、つまり曲そのものの権利者だ。いまその道は、機関を通っている。ディストリビューター、レーベルの経理部門、音楽出版社、管理代行会社、そしてASCAP、BMI、GEMA、PRS、MLCのような著作権管理団体だ。

私たちがこれらを信頼するのは、主に大きくて、長く続いてきたからだ。それは不合理ではない。大きく長く続く機関は、間違えれば失うものが多い。自分で仕事を確かめられないとき、それを頼りにするのは筋が通っている。だが、そうした信頼には大きなコストがかかり、そのコストは消えない。機関を立たせておくために、毎年払い続けなければならない。

  • 機関を運営する。 ASCAPの運営費は2025年に約1億8,600万ドル(約294億円)。GEMAは2024年に1億9,870万ユーロ(約353億円)だった。こうしたコストは、支払われる前のお金から差し引かれる。
  • 機関を維持する。 MLCの2024年の予算は3,905万ドル(約61億7,000万円)で、ストリーミングサービスが印税とは別に払い、年に最大3%まで増やせる。最初の1セントを支払う前に、設立に3,350万ドル(約52億9,000万円)、最初の1年の運営に2,850万ドル(約45億円)がかかった。
  • 機関を守る。 2024年、ASCAP、BMI、SESAC、NMPA、SoundExchange、ユニバーサル、ソニーが報告したロビー活動費は、合わせて約680万ドル(約10億7,000万円)だった。すべてが印税に関するものではないが、これらの機関は法律によって作られたので、自分を守る場所も法律になる。(詳しくは「Miso:音楽のための金融レール」に書いた。)
  • 誰も公表しないもの。 料率の審理、料率裁判所、政府の監督、そして世界の約230の団体をつなぐ相互管理契約にも、コストがかかっている。そのどれについても、数字は見つからなかった。

そして時間がある。MLCは、ストリームがあった月から約75日後に支払う。BMIは、演奏から平均で約6か月後に支払う。海外からのお金には6か月から18か月かかる。待つことにも、お金がかかる。

誰かが手を抜いているという話ではない。組織を通して信頼を運ぶと、単純にこれだけかかるということだ。建物、人員、監査、弁護士、政治。すべては、人が自分では確かめられない数字を信じる理由を持てるようにするためだ。

数学には評判がいらない

1 + 1に戻ろう。算数を保証してくれる機関は誰にも必要ない。算数は自分で自分を保証するからだ。誰でも結果を確かめられるし、大きいからといって違う答えになることもない。

暗号技術は、この性質をはるかに遠くまで広げる。デジタル署名は数学の問題だ。鍵を持つ人だけが作れて、誰でも確かめられる。ブロックチェーンは、何千台ものコンピューターが同じ数学の問題で互いに確かめ合いながら保つ記録だ。だから、どれか1台を信頼する必要はない。そしてスマートコントラクトは、その記録の上にあるコードだ。毎回同じように動き、何をするかは誰でも読めて、実際にそうしたかを誰でも確かめられる。

だから「正しく支払われたか」という問いが変わる。これまでは、帳簿を持つ者を信頼することで答えていた。いまは、1 + 1と同じように、確かめることで答えられる。

ただ、数学に何でもできるわけではない。曲を誰が書いたかは教えてくれない。Misoでは、誰かが支払う前に権利者が分配の割合を記録し、コードがそれを守らせる。誰が権利者かを決めるのは、いまもその外側だ。それにコードにはバグがありうる。だからコントラクトは、誰でも調べられる公開のチェーンの上に置かれている。それでも、いまの仕組みで高くついているのはお金の経路と記録の管理で、そこはまさに数学が得意なところだ。

お金を動かすコストを、それぞれの道で

両方の道に数字をつけてみた。数えたのは配管だけだ。ストリームや販売のお金を、録音と楽曲の権利者に届けること。販売そのもの、ラジオや店舗向けのライセンス、レーベルとアーティスト、出版社と作家の間の取り分は、すべて除いた。

これまでの道を、できるだけ低く数える。 出発点は、世界で年に約285億ドル(約4兆5,000億円)あるデジタルの権利収入だ。録音のストリーミングから約220億ドル(約3兆4,800億円)、楽曲に約65億ドル(約1兆300億円)。そのうえで、すべての前提をこれまでの仕組みに有利にした。

  • 録音側のコストはゼロと数えた。実際にはレーベルもディストリビューターも手数料を取っている。
  • 楽曲側ではデジタルの徴収額だけを数え、世界のすべての団体が、いちばん安いMLCと同じ4%未満で運営されていることにした。実際の幅は9〜15%だ。
  • 出版社や管理代行会社の手数料、支払われないままの未特定のお金、待つことのコストは除いた。

そこに、記録があってこの徴収額の外にあるMLCの予算3,900万ドル(約61億6,000万円)だけを足し戻した。合計は年に約2億4,900万ドル(約393億円)、月に2,100万ドル(約33億2,000万円)。これは下限で、実際の数字はずっと大きい。

Misoの道。 Misoでは、販売のお金の支払いは1回のトランザクションで済む。20ドル(約3,160円)の販売をリリースの4曲に分けるコストは約**0.00016ドル(約0.025円)**で、金額がいくらでも変わらない。

これまでの仕組みに有利になるように、どの販売も両方の権利者に届くまでに、まとめずに別々の6回のトランザクションがかかり、そのそれぞれが同じコストだと仮定した。お金も同じ年285億ドル(約4兆5,000億円)を、20ドル(約3,160円)ずつ動かすとした。月に約1億2,000万回の支払いで、月に約11.7万ドル(約1,850万円)。動かしたお金の約0.005%だ。

月あたり100ドル(約1.6万円)あたり
これまでの道(下限)約2,100万ドル(約33億2,000万円)約0.87ドル(約137円)
Miso(多めに見積もり)約11.7万ドル(約1,850万円)約0.005ドル(約0.79円)

これまでの仕組みをいちばん甘く見積もり、私たちの仕組みをいちばん厳しく見積もって比べても、約180分の1だ。

この比較は、わざとこれまでの仕組みに有利にしてある。私たちが現実的だと考える数字を出すには、業界が実際に取っている料率を使う。ディストリビューターの手数料、管理団体の手数料、管理代行会社の取り分、そして誰にも結びつけられないままの作家のお金だ。その料率では、100ドル(約1.6万円)ごとに約11.90ドル(約1,880円)が権利者の手に届く前に消える。月にして約2億8,000万ドル(約442億円)で、しかも何か月も待つコストはまだ入っていない。Misoでは、権利者が実際にそうするように取り分をまとめて受け取るとすると、同じお金を動かすコストは月に約3万ドル(約474万円)だ。約1万分の1に近い。

正直な限界も書いておく。これはお金を動かすコストの比較で、Misoという会社を運営するコストの比較ではない。Misoは、どのストアとも同じようにプラットフォーム手数料を取る。それはストアの利幅と同じ事業のコストで、お金を動かすコストではない。また、Misoの外で生まれた楽曲の印税は、いまも管理団体を通る。

そこにない機関

いちばん大きな違いは、あの表には出てこない。Misoのコントラクトは、一度公開されると誰も変えられず、動かすために誰かが運営する必要もない。人員も、建物も、予算も、ロビー活動もない。会社としてのMisoが明日なくなっても、支払いは動き続ける。経路を開けておくための維持費はゼロだ。立たせておく機関が、そもそもないからだ。

数学が真実のよりどころになるとは、そういうことだ。これまで毎年の運営費で買っていた信頼が、1 + 1と同じように、算数とともにただでついてくる。

そのお金で、ほかに何がまかなえるだろう

いちばん低い見積もりでも、音楽は自分のお金を動かすだけで年に約2億4,900万ドル(約393億円)を使っている。しかもそれはデジタルの楽曲側だけだ。実際の数字はその何倍にもなる。

そのお金は、音楽のほかのすべてと同じところから出ている。スタジオの時間、セッションミュージシャン、ミキシングエンジニア、ツアーの支援、次のレコード。配管を立たせておくために使う1ドルは、そのどれにも回らなかった1ドルだ。

浮いたお金がどこへ行くかは約束できない。だがMisoには、間に立ってそれを手元に残す者がいない。ファンがリリースに払ったお金は、合意した割合のとおりに権利者に届き、その使い道は権利者が決める。その多くは音楽に戻っていくと、私たちは思っている。

1 + 1 = 2を教えてくれる機関は、誰にも必要ない。音楽をつくる誰にとっても、支払われたことを教えてくれる機関は必要ないはずだ。

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