本文へスキップ
miso

音楽に国境はない。印税にはある。

ベルリンでの1回の再生、米国のソングライターがひとり、2つの国の管理団体、そして1年以上。音楽は一瞬で国境を越えるが、お金はそこで止まる。

Brian Li

· 9分で読めます

ベルリンで誰かが、Spotifyで1曲を再生する。書いたのは米国のソングライターで、曲はほかのすべてのストリームと同じようにリスナーに届いた。1つのカタログから、1つのファイルが、どこでも変わらないインターネットを通って。国境はどこにも関わっていない。

ソングライターのお金は、話が違う。Spotifyは作詞・作曲の印税を「利用された地域に基づいて」支払う。だからドイツでの再生はドイツのお金を生み、ドイツで徴収される。録音の印税はそうではない。再生がどこで起きても、曲を納めた相手に支払われる。聴くことに国境はなく、録音のお金にもない。楽曲のお金だけは、書いた人に届くまでに国境を越えなければならない。

この記事では、その1回の再生を、ソングライターのところまで追いかける。

最初の経由地:ドイツ

作詞・作曲の印税を集めるのは、著作権管理団体だ。自国で音楽をライセンスし、ソングライターのために徴収する組織で、111の国と地域に228団体ある。それぞれが自分の地域を受け持ち、互いのために徴収し合う契約で結ばれている。もとをたどれば、著作権そのものの仕組みに行き着く。著作権に関する主要な国際条約であるベルヌ条約のもとでは、各国での保護はその国の法律で決まる。

この曲が、管理団体のネットワークを通じたふつうのやり方でライセンスされているとしよう。その場合、ベルリンでの再生を徴収するのは、ドイツの管理団体GEMAだ。GEMAの運営コストは、2025年に徴収額の14.1%だった。管理団体どうしのモデル契約は、演奏による収入の最大10%を、自分の会員のための社会・文化事業に充てることも認めている。GEMAは公衆演奏で10%、オンラインの区分で1%を差し引き、そのお金はドイツに残る。

それから、ソングライターの取り分は待たされる。BMIによれば、海外の管理団体の多くは、BMIへの支払いが年に1〜2回だ。EU法は、海外の団体に支払うまでに会計年度の終わりから最大9か月の猶予を与え、受け取った側の団体にも、作家に支払うまでにさらに6か月を与えている。

次の経由地:母国

やがてお金は、ソングライター自身の管理団体、米国のBMIに届く。BMIは海外からの収入に自らの手数料3.6%をかけ、ソングライターに支払う。BMIは作家たちに、これは「発生国によって12〜18か月かかることがある」と説明している。それに、海外の団体が金額を間違えても、ほとんどの団体は50ドル(約7,900円)未満の誤りを訂正しない。ソングライターにとって、それはかなりの再生回数だ。

つまり、一瞬で届いた1回の再生が、2つの国の機関を通り、2つのカレンダーに沿って、1年以上あとに支払われる。これが普通のケースだ。Spotifyによれば、デビューから2年たったアーティストは、平均してSpotifyの印税の半分以上を母国の外から得ている。

この連なり全体がソングライターにいくらのコストを負わせているのかは、誰も測っていないし、私たちも測れたふりはしない。だが、知的財産を扱う国連の機関である世界知的所有権機関(WIPO)は、新しい管理団体向けの手引きに計算例を載せている。演奏される音楽の半分が海外の曲、半分が国内の曲だとする。運営費30%、文化目的の控除10%を差し引き、誰も特定できなかった海外の曲の分をほかの全員に配り直すと、「総収入のうち海外に渡るのは23.5%にすぎない」。これはWIPOの仮定の例であって、測定値ではない。WIPOがこの例を示したのは、お金がすべて国外へ流れ出るわけではないと新しい団体を安心させるためだった。海外のソングライターの側から読むと、印象はずいぶん違う。

城だらけの川

中世のライン川にも、同じ問題があった。1250年、マインツとケルンの間には、通行税を取る関所がおよそ12あった。新しい関所を認める皇帝がいなくなると、経済史家の推計では、その数は4年以内に少なくとも倍になった。どの城も、自分で値段を決めた。誰と誰が示し合わせたわけでもないのに、合計は、川全体をひとりで持つ者が取ったであろう額より高くなった。

ライン川は、最後には1つのルールで直された。1868年のマンハイム条約は、航行そのものには通行税をかけないと定め、実際のサービスへの料金は引き続き認めた。ソングライターのお金についても、私たちが望むのはおおむねそういうことだ。誰かが実際にした仕事には払う。地図の上の線をお金が越えることには払わない。

最大手の出版社は、もう出ていった

国境が必須ではないことのいちばんの証拠は、最大手の出版社がその外に出たことだ。

2005年、欧州委員会は、オンライン音楽を国境を越えてライセンスすること、そして権利者が自分のオンラインの権利を自由に移せるようにすることを勧告した。最初に動いたのはメジャーの出版社だった。英米のカタログのオンラインの権利を、ふつうの管理団体のネットワークから引き揚げ、欧州全域をカバーする新しいライセンス会社に移した。どの会社も、最大級の管理団体の1つか2つと組んで運営された。2010年、メジャーは音楽出版の68.7%を握っていた。そして彼らのお金は、速く動くようになった。欧州委員会自身の数字では、GEMAがオンライン収入を6か月ごとに支払っていたのに対し、EMIのカタログをライセンスしていたCELASは毎月支払っていた。

ほかの全員は、中に残った。彼らのための欧州の解決策は、管理団体をそのまま残し、その上に層を1つ足すものだった。多くの国をまとめてライセンスするハブだ。2021年に欧州委員会が確かめたところ、権利者に課される手数料は「下がっていない」うえに、サービス側の全体のコストは「上がったように見える」。

どれも、誰かの悪意を必要としない。どの層も、自分の立っている場所に国境があるから支払いを受けている。最大級のカタログは、迂回できるほど大きかった。ベルリンで再生されたあのソングライターは、そうではない。

それでも国境が意味を持つところ

支払いの仕組みが良くなっても、変わらないこともある。著作権法は国ごとのもので、支払いの仕組みで条約を書き換えることはできない。米国は、条約で引き下げられない限り、外国人に支払う印税から30%の税を源泉徴収する。これは税であって、手数料ではない。

それに、地域が1つになっても、価格が1つになるわけではない。Spotify Premiumは、スイスでは月15.95スイスフラン(約3,060円)、インドでは139ルピー(約231円)だ。人々が払える額に合わせて値段をつけるのは正しいと、私たちは思う。国ごとの価格や印税プールは、残っていい。私たちが変えたいのは、そのあとでソングライターのお金が通っていく機関の連なりだ。

そして、本当にローカルな音楽もある。バーやジムは1つの場所で音楽を流し、その場所でライセンスを受けなければならない。だから地域で徴収するのは理にかなっている。数え方が粗くてもだ。英国のPRSは、公衆演奏のお金の半分以上を、実際に流れた曲ではなくラジオの放送記録のような代用データを使う「類推」によって分配している。それは、また別の記事の話だ。

リージョンはひとつ、地球

インターネットのインフラ企業Cloudflareは、開発者向けプラットフォームを、私たちの好きな言い回しで説明している。「リージョンはひとつ、地球だ」。開発者は、コードをどこで動かすかを選ばない。コードはどこでも動く。とはいえCloudflareは、国境が消えたふりをしたことはない。データを1つの国にとどめることが法律で求められている顧客は、ソフトウェアの設定でそれを有効にできる。基本はグローバルに、法律が求めるところではローカルに。ソングライターのお金にも、このモデルがほしい。

Misoは、そのように動く。楽曲と録音を誰が持ち、各トラックのお金をどう配分するかは、誰かが支払う前に記録され、あとから書き換えることはできない。ファンはリリースに直接支払い、ベルリンからの支払いも、サンパウロからの支払いも、同じ場所に届く。そこからお金は、誰でも始められる段階を踏んで動くが、配分で決まった行き先にしか行けない。持ち主はそれぞれ、どこに住んでいても、好きなときに自分の取り分を受け取る。ドイツの誰かが、それが誰の曲かを割り出す必要はない。お金が届く前に、それはもう決まっているからだ。

Misoは、ストリーミングサービスに音楽をライセンスしないし、著作権法や税を変えもしない。1回の支払いで全員に一度に支払われるわけでもない。Misoは、Suiのブロックチェーンの主要な公開ネットワークであるSui Mainnetで稼働していて、Misoのレコード販売もその上で動いている。Miso Streamingは開発中で、初期のプロトタイプは、この設計が機能することを示している。

その範囲の中で、ソングライターはより多くを、より早く受け取れると私たちは考えている。コストを次々に差し引いていく機関が減るから多く、管理団体の間のカレンダーを待つ必要がないから早く。ベルリンでの再生は、インターネットを通って一瞬でリスナーに届いた。その対価も、同じように届くべきだ。

ほかの記事

2026年10月20日 · 8分で読めます

音楽の印税インフラに隠れたコスト

音楽は、印税を扱う機関を動かし続けるための請求書を払い続けている。数学には、それがいらない。

2026年10月18日 · 9分で読めます

ファンとアーティストの間に立つのは誰か

Spotifyの月額料金ひとつを、曲をつくった人たちのところまで追いかける。間にいる5社のうち2社は、お金を動かしているだけだ。レーベルと出版社は本物の創作の仕事をしているが、著作権も持っていて、その力はそこから来ている。

2026年10月18日 · 10分で読めます

音楽の印税インフラは何のためにあるのか

小さな曲のアーティストに支払うコストが、いまではその曲の稼ぎを上回っている。ほかの分野では、企業がお金を動かす仕事を競い合わなければならなかったところで、お金を動かすことは安くなった。音楽の支払いを担う層では、競争している者がほとんどいない。