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ファンとアーティストの間に立つのは誰か

Spotifyの月額料金ひとつを、曲をつくった人たちのところまで追いかける。間にいる5社のうち2社は、お金を動かしているだけだ。レーベルと出版社は本物の創作の仕事をしているが、著作権も持っていて、その力はそこから来ている。

Brian Li

· 9分で読めます

米国のSpotify Premiumは月12.99ドル(約2,050円)だ。ある月、あなたがほとんど1曲だけを聴いて過ごしたとしよう。歌っている人はレーベルと契約していて、曲を書いたソングライターは音楽出版社と契約している。あなたのお金は、どこへ行くのか。

Spotifyの説明では、音楽の売上のおよそ3分の2が印税に回り、そのうち約5分の4が録音、5分の1が楽曲の分だ。そこからお金は、いくつもの会社を通りはじめる。あなたの再生のような米国のストリームでは、音楽をつくった人の手に届くまでに、私たちは5つの会社を数えた。Spotify、レーベル、Mechanical Licensing Collective(MLC)、ASCAPやBMIのような演奏権管理団体、そして音楽出版社だ。(歌手が自分で曲をリリースしていたなら、レーベルの位置にディストリビューターが入る。)

どの会社も、取り分に見合う何かをしている。そこで私たちは、それぞれについてひとつだけ問いを立てた。あなたのお金が、配分がすでに決まった状態で、楽曲と録音の持ち主にまっすぐ届くとしたら、この会社にまだ仕事は残るだろうか。

5社のうち2社には残らない。仕事のやり方がまずいからではない。その2社の仕事が、お金を動かし、それが誰のものかを割り出すことだからだ。残りの3社、つまりSpotify、レーベル、出版社には、本物の仕事が残る。面白いのはこの3社だ。どれもお金の流れ方も握っていて、アーティストに対する力は、仕事そのものよりも、その支配から来ていると私たちは考えている。

録音の取り分

あなたのお金の大部分は録音の分で、まずレーベルに行く。録音を持っているのは、たいていレーベルだからだ。歌手は、契約で決まった率の印税をレーベルから受け取る。英国の競争・市場庁(CMA)がメジャーレーベルと新人アーティストの契約を調べたところ、平均の印税率(総額ベース)は2012年の19.7%から上がって、2021年には23.3%だった。プロデューサーへの支払いは、たいていこの中から出る。

次がリクープ(回収)だ。レーベルが出したアドバンスと録音費用の大半は、歌手が何かを受け取る前に、歌手の印税から返済される。古い契約では、さらに差し引かれる。返品に備えた留保金、売上の90%分にしか払われない印税、過去のアルバムのアドバンスを新しいアルバムの稼ぎから回収すること。あなたの12.99ドル(約2,050円)のうち歌手に届くのは、控除がずらりと並んだあとの、割合のそのまた割合だ。

楽曲の取り分

小さいほうの楽曲の取り分は、もっと長い道をたどる。MLCは、ストリームで曲を複製することへの印税を集め、ストリームを曲に、曲を持ち主に照合して、支払う。それとは別に、演奏権管理団体が、曲が演奏されることへの印税を集める。そこから出版社が取り分を取る。標準的な契約では、楽曲の収入のうち出版社分の半分をまるごと受け取り、共同出版契約のソングライターなら全体の約75%を手にする。

お金が迷子になるのは、この照合の段階だ。2026年2月の時点で、MLCは登録済みのどの曲とも照合できていない3億2,820万ドル(約519億円)を抱えていた。最後まで照合されなかったお金は、いずれ市場シェアに応じて配られることがあり、そうなるとその大半がカタログの大きい出版社に流れる。だから、あるソングライターに支払われるべきお金が、その曲と何の関係もない出版社に渡ることもある。

これこそが、徴収する層があるそもそもの理由だ。あなたが支払った瞬間、システムは誰がその曲を持ち、どう配分されるかを知らない。だから誰かがお金をまとめて集め、あとで割り出すしかない。演奏権管理団体には、もうひとつ役に立つ点も認めるべきだ。カタログ全体をカバーする1つのライセンスがあるおかげで、誰も1曲ずつ交渉しなくて済む。だが残りの大半は、お金が動く前に所有関係が記録されていなかったからこそ生まれた事務作業だ。

本物の仕事がある3社

Spotify、レーベル、出版社は、この問いを通る。どれも、本物の仕事と、流れの中で自分が受け持つ部分の支払いの配管を、ひとまとめにして売っている。

Spotifyはアプリをつくり、カタログのライセンスを受け、音楽を薦める。そして最初の受け渡しの支払いルールも書いている。お金のプールをどう分けるか、何を差し引くか、いつ払い出すか。

レーベルはアーティストを見つけ、資金を出し、レコードを売り込む。その仕事は本物で、お金もかかる。レーベルの業界団体によれば、レーベルは2025年にアーティストの発掘と宣伝に93億ドル(約1兆4,700億円)を使った。英国の当局のデータは、この数字が語らない部分を補ってくれる。2021年、英国のメジャーは売上の24%をそうした費用に使ったが、アーティストから回収した分を差し引くと17%にとどまる。「通常、これらの費用の大半はレーベルがアーティストの印税から回収できる」からだ。歌手はすでに、創作面の支援の多くを自分で払っている。手数料としてではなく、所有の取り決めを通じて払っているのだ。

出版社は、曲をアーティストや映画・テレビに売り込み、共作のセッションを組み、作家を育てる。そして彼らはすでに、その仕事と事務作業を別のものとして扱っている。Universal Music Publishingは、登録と印税処理を、クリエイティブのチームとは別のGlobal Administrationという部門で運営している。このセットが切り離せることを示す、私たちが見つけたなかでいちばんはっきりした証拠だ。

セット売り

流れの中で創作の仕事をしているのは、レーベルと出版社だけだ。著作権を持っているのも、この2社だけだ。この2つを一緒に売るのがセット売りで、あなたのお金の列の先頭に彼らを立たせているのは所有だ。お金は持ち主に届き、持ち主がアーティストに支払う。

従来型のレコード契約では、レーベルが録音を、多くの場合は著作権が続くかぎりずっと持つ。リクープは、古いアルバムで回収しきれなかったアドバンスを新しいアルバムの印税から差し引くことも含めて、歌手より先にレーベルがお金を手にするからこそ成り立つ。そしてレーベルの取り分は、誰かがまだそのレコードのために働いているかどうかに関係なく、所有が続くかぎり続く。

私たちの推測では、このセットが生まれた理由は物理的なものだ。かつてレーベルはレコードをプレスし、何千もの店から代金を集めていた。お金を預かることは、仕事の一部だった。インターネットは、その仕事の大半をなくした。所有は残り、あなたのお金と歌手の間にあるレーベルの居場所も残った。

何が変わるのか

Misoでいま動いているのは、こういうことだ。楽曲と録音を誰が持ち、各トラックのお金をどう配分するかは、誰かが支払う前に記録され、あとから書き換えることはできない。ファンはリリースに支払い、そこからお金は、誰でも始められる段階を踏んで動くが、配分で決まった行き先にしか行けない。持ち主はそれぞれ、好きなときに自分の取り分を受け取る。1回の支払いで全員に一度に支払われるわけではない。これは、Suiのブロックチェーンの主要な公開ネットワークであるSui Mainnetで稼働している。Misoは、誰がその曲を書いたかは決めない。当事者が合意した配分を強制するだけだ。ストリーミングは開発中で、初期のプロトタイプは、この設計が機能することを示している。

ここから先は予測だ。お金が動く前に所有が決まっていれば、照合と転送だけが仕事の会社は、法律で求められる場合を除いて、やることがずっと少なくなる。Spotifyはアプリをつくり続けるが、支払いのルールは書かなくなる。再生はリリースに支払われ、配分はリリース自身から決まる。(Misoと連携しているストリーミングサービスは、まだひとつもない。これは私たちが向かうと考えている方向であって、いまの姿ではない。)

レーベルと出版社は、アーティストが雇う会社になる。手数料で、プロジェクト単位の価格で、あるいは特定のリリースの持分で。その持分はリリースの配分に書き込まれ、アーティスト自身の分と同じやり方で支払われる。

その市場は、もうある。業界でアーティスト・サービスやレーベル・サービスと呼ばれる契約では、アーティストが著作権を持ち続け、短い期間だけライセンスする。Sony傘下のAWALは、30日ごとに自動更新されるライセンスで15%を取り、アーティストに「すべてはあなたのもの」と伝えている。UniversalのVirgin Music Groupは、2026年2月に、別のサービス会社であるDowntownを買収した。ただ、「サービス」という言葉は多くを保証しない。UnitedMastersはアーティストに所有権はすべて手元に残ると伝えているが、その規約は、期限がなく取り消しもできないライセンスをUnitedMasters自身にも与えている。大事なのは、誰が著作権を持つのか、どれだけの期間なのか、そしてアーティストに届くまでの間、誰がお金を持つのかだ。

本物の仕事をしている会社は、得をすると私たちは考えている。いま彼らは、直接、あるいは管理団体を通じて、お金が動いたあとで誰にいくら払うべきかを組み立て直すためにお金を払っている。所有が先に記録されれば、そのコストの大半は消え、レーベルや出版社には雇われた仕事が残る。お金を動かすことだけが仕事の会社は、得をしない。存在する理由を失う。

いまの契約を擁護するなら

いまの契約を支持するいちばんの論拠は、リスクだ。割合で支払われるレーベルは、レコードが稼いだときにしかお金を得られないが、手数料はどちらにしても支払わなければならない。お金のない新人アーティストにとっては、そのほうが良い取引でありうる。まだつくられていないレコードに、誰かが資金を出さなければならない。支払いが速くなっても、それは変わらない。

私たちが反対しているのは、終わりがなく、アーティストが迂回できない取り分だ。支払いを受けるためにレーベルを必要としないアーティストも、仕事のためにレーベルを雇うことはできる。良いレーベルは、これからも雇われ続けると私たちは思っている。

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