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Miso:音楽のための金融レール

本格的な資産クラスには、どれもそのための決済インフラが築かれてきた。音楽には、それがなかった。これまでは。

Brian Li

· 29分で読めます

いま音楽に使われた1ドルが、その音楽をつくった人たちに届くのは、2か月後から2年後のどこかだ。その途中で1ドルは6つか7つの組織を経由し、そのどれもが二重に料金を取っている。お金の一定割合と、お金が待たされている間の運用益だ。

業界は1つめの料金について議論する。2つめの料金こそが、1つめの料金が決して下がらない理由だ。

音楽にはレールがなかった

レールとは、価値の決済が乗る共通のインフラのことだ。お金がどう動くか、決済がいつ確定するか、いくらかかるか、何が記録されるかを決める。VisaやMastercardはレールだ。ACHもレールだ。銀行の送金もレールだ。FedNowもレールだ。銀行アプリやVenmo、Stripeはレールではない。その上を走っている。

何が動いているのかを決済の側で理解する必要があった資産クラスは、どれもいずれ自分のためのインフラを手に入れた。

  • 米国株は、DTCC1を通じて清算・決済される。NSCCがブローカー間の取引をネッティングして保証し、DTCが証券を保管して、所有者間の帳簿上のポジションを移す。
  • 米国債は、Fedwire Securities Service2上で保管・移転される。証券と資金を、ひとつの証券資金同時決済(DVP)の指図で同時に動かす。
  • 外国為替は、CLS3を通じて決済される。資金同時決済(PVP)の仕組みで、18通貨にわたり1日8兆ドル超を決済している。

資産クラスごとにひとつのレールがあり、どの場合もレールは資産の形を知っている。ポジションと、その所有者と、対応する資金の側が、ひとつの操作で動く。取引が誰のものだったのかを、あとから別の業界が組み立て直す必要はない。

音楽は、それを手に入れなかった。汎用の決済レールの上に、会計の業界を後付けして動いている。

決済レールは、1ドルの動かし方を知っている。だが、録音された1曲が2つの別々の著作権からなることは知らない。録音(聴こえている原盤)と楽曲(その元になった曲)だ。それぞれが作家、プロデューサー、演奏者の間で、何年も前に交渉された割合で分けられていること。そして2つの半分は、たいてい別々の会社が所有し、管理していること。レールには、そのどれも見えていない。

だから、お金はまず、ひとかたまりのまま誰かの銀行口座に決済される。仕事が始まるのは、そのあとだ。再生を作品に、作品を所有者に、所有者を割合に、割合を支払い先に照合していく。そのどの段階も、それぞれ別の会社が担い、それぞれのデータベースと、それぞれの会計期間と、その間お金を置いておくそれぞれの銀行口座を持っている。

印税管理という業界そのものが、「お金が届いた」と「お金が所有者に届いた」の間の隙間に住んでいる。お金もまた、そこに住んでいる。

1ドルを追う

1曲は2つの著作権なので、お金は2本のパイプをたどる。録音の側は、プラットフォームからライセンスを受けた相手へ流れ、そこから契約に従ってアーティストへ届く。楽曲の側は、さらに2種類の印税に分かれる。演奏印税は、曲が公に演奏されたときに発生し、演奏権管理団体、つまりPRO(ASCAP、BMI、SESAC、GMR)が徴収する。PROは、ラジオ局やバー、ストリーミングサービスに、自分たちが管理するあらゆる曲を流せるライセンスを売っている。メカニカル印税は、曲が複製されたときに発生し(ストリーミングの1回の再生も複製にあたる)、米国ではMechanical Licensing Collective(MLC)が徴収する。そこからお金は音楽出版社へ、海外のその現地パートナーへ、そして最後に作家へと渡る。作品はひとつ。台帳は6つ。

公表されている数字を、段階ごとに見ていく。

楽曲の側(米国でのストリーミング、音楽収入1ドルあたり):

段階お金を持っているのは滞留する期間手元に残す分
1. プラットフォームストリーミングサービス月ごとにプール音楽収入の約30%4
2. メカニカル(複製)MLC月ごとのサイクル。会員には毎月支払う公表していない管理手数料
3. 演奏(公の演奏)PROBMI自身が公表しているスケジュールで、発生した四半期から3.3〜5.5か月後5約15%(2022年に営利企業へ転換したあとのBMI6。以前は約90%を支払っていた)
4. 海外海外の著作権管理団体 → 作家が所属する国の団体 → 出版社の現地パートナーよく言われるのは12〜18か月7各国での管理手数料に加え、現地パートナーの手数料(一般に15〜25%)
5. 出版社音楽出版社出版社自身のスケジュール標準的な契約では作家の取り分の半分(事務手続きだけを担う場合は15〜25%)
6. 照合できないもの(「ブラックボックス」)誰の曲かを特定できないときのMLC少なくとも2028年まで。その後は市場シェアで分配何も取らないが、そのお金は特定の曲のものではなくなる

原盤の側(米国でのストリーミング、音楽収入1ドルあたり):

段階お金を持っているのは滞留する期間手元に残す分
1. プラットフォームストリーミングサービス月ごとにプールし、総再生数に占める割合で分ける音楽収入の約33%4
2. レーベルレコード会社自社の明細サイクル。支払ったアドバンス(前払金)を回収するまでは一切支払われない契約上、アーティストは小売価格の10〜25%を受け取るが、より低い卸売価格で計算されることも多い。そこからまず差し引かれるもの8:返品に備えて留保されるお金、販売数の90%分しか支払わない古い契約条項、過去のアルバムのアドバンスの未回収残高
3. ディストリビューターセルフサービス型のディストリビューター各社の支払いサイクル。しかも受け取れる額が2〜50ドル以上になってから9売上の0%(年額約25ドルの定額制)から9%まで9
4. 取り残されるもの残高が最低額に届かない段階すべて無期限仲介者と銀行

最良と最悪の差は極端に大きい。定額制のディストリビューターを使い、MLCにも正しく登録しているインディーのアーティストなら、お金の大半を1〜2か月で受け取れる。一方、ツアーやマーチャンダイズの収入からも取り分を取るメジャーレーベルと契約し、出版印税を海外で徴収しているアーティストは、レーベルがアドバンスを回収するまでの何年もの間、何も受け取れない。その後に受け取るのは、上に挙げた控除をすべて引いたあとの卸売価格の10〜25%だ。作曲の側は、現地パートナーを経由して戻ってくるまでに18〜36か月かかる。答えがひとつに定まらないこと自体が、発見だ。レールが仕事をしていないので、結果はその上に乗っている契約がたまたま定めたものになる。

誰も議論しないのが、3列目だ。そのどの行も、他人のお金を、自分で決めたスケジュールで抱えている会社だ。

2つめの料金

移動中のお金は、眠っているお金ではない。持っている者が、それで稼ぐ。これはフロート10と呼ばれる、ごくありふれた、よく知られた経済の仕組みだ。保険会社や決済代行会社が、本来の事業と同じくらい、預かったお金の運用で稼いでいるのもそのためだ。音楽だけがその例外になる理由はない。

いくつかの著作権管理団体は、自ら提出した書類でそれを認めている。SoundExchangeは、預かっている印税から得た利息11を自らの運営費と相殺している。ASCAPは投資収益12を、分配するプールに組み込んでいる。MLCは、まだ所有者と照合できていないメカニカル印税を預かり、それを運用している。その税務書類を読んだ批判者13は、保有する証券が10億ドルを超えると見ているが、MLCを擁護する側は、その数字には照合済みで未分配の印税や運営準備金が、照合できていない資金と一緒に混ざっていると指摘する。その混在こそが問題だ。外からは、どのドルがどれなのか誰にもわからず、そのすべての運用益は保有者のものになる。

レーベルやディストリビューターは、同じような開示を一切していない。そして私は、彼らが意図的に明細を遅らせていると言っているのではない。主張しているのは構造だ。ここにあるどの層も、自分のものではないお金のプールを、自分で決めた期間抱え、その運用益を手元に残している。

ひとつのリリースに数字を当ててみる。1年間で5万ドルを稼ぎ、その1ドル1ドルが、音楽をつくった人たちに届くまでに平均して約6か月滞留するとする。3か月物の米国短期国債とほぼ同じ約4%14で計算すると、その遅れは、残高を抱えている者にとって約1,000ドルの価値がある。マイク1本、あるいはスタジオ10時間分が、時間の経過だけを理由に、アーティストから仲介者へと移っている。

これをカタログの規模にしてみる。1億ドルを6か月、4%で抱えれば、年に約200万ドルが毎年生まれる。保有者が何ひとつ追加で働くことなく、誰の明細にも項目として現れることなく。

アーティストの損失は、利息よりも大きい。利息は、安全で退屈な版にすぎないからだ。本当のコストは、選択肢だ。9月に届いたお金では、3月につくるはずだったレコードの資金にはならない。アーティストの収入は、とりわけ速く回転する。すぐにレコーディングへ、ツアーへ、マーケティングへ、共作者への支払いへと出ていく。それを遅らせることは、ほとんどどんな種類の収入を遅らせるよりも、1ドルあたりの害が大きい。

これには、もっと鋭い版がある。安全な利回り以上を求める保有者は、残高をすぐには引き出せない場所に置くことができる。あるアーティストへの支払い期限が来れば、それは今回のサイクルに入ってきたお金でまかなわれ、帳尻はあとで合わせられる。全員が期日どおりに支払いを受ける。ただしそれは、列の後ろにいるアーティストのお金でだ。これは満期変換15と呼ばれるもので、銀行がしていることであり、資産が実在し、その仕組みが開示されていれば合法だ。ポンジ・スキームとは、ひとつの特徴を共有している。今の支払いを新たな流入に頼っていることだ。そして、2つのことがそれをポンジ・スキームと分けている。実際のリターンと、仕組みについての誠実さだ。アーティストは印税明細から、そのどちらも確かめられない。

3つめの料金:まったく届かないお金

お金の一部は、遅れて届くのではない。届かないのだ。

Spotifyには1億曲をゆうに超える楽曲がある。そのうち数千万曲は年間の再生が1〜1,000回で、平均すると月に0.03ドルになる。Spotify自身の印税ガイドは、その先に起きることをはっきり書いている4。レーベルやディストリビューターは最低出金額(たいてい2〜50ドル)を設けており、銀行は1回の取引ごとに1〜20ドルの手数料を取るため、「このお金はアップロードした人に届かないことが多い」。その総額は年に約4,000万ドルになる。2024年4月から、Spotifyが最も再生の少ない楽曲に対して取った対策は、印税をそもそも発生させないことだった。

同じ仕組みがどの段階でも働いていて、何が取り残され、それがどこへ行ったのかの台帳を公表している者はいない。

照合できないお金は、別の道をたどって同じ場所に行き着く。MLCがある再生を登録済みの作品と照合できないとき、そのお金は業界がブラックボックスと呼ぶところに入る。ストリーミングサービスは、MLCの発足時に、過去に照合できなかった印税4億2,400万ドル16をMLCに引き渡した。米国著作権局の報告書17は、その扱いを明確に書いている。保留期間のあと、照合できない印税は、MLCの記録にある出版社へ相対的な市場シェアに応じて分配される。小規模な作家や契約のない作家に支払われるはずだった可能性の高いお金が、最大のカタログを持ち、記録を最もきれいに整えている最大手の出版社へ流れる。業界の記録が悪ければ悪いほど、メジャーの取り分は増える。最初の分配は、2028年より前には行われない見込みだ。

チェーンの中に、速くなることで報われる者はいない

あるPROが、分配までの遅れを5か月から5日に縮めたとしよう。

そのPROは、四半期分の徴収額にかかるフロートを手放すことになる。四半期ごとのサイクルを回すことに付随する管理収入も手放すことになる。そして、ソングライターがそもそもそのPROを必要とする理由の大半を失う。お金を受け取ってすぐに転送するだけの組織は、誰にも中が見えないプロセスに価値を包み込んでいる組織よりも、ずっと簡単にほかの選択肢と比べられてしまうからだ。

このシステムのどの層にとっても、速さはコストであり、それを築ける立場にいる誰にとっても利益にならない。これらの組織のどれかに、より速い決済へ投資してほしいと頼むのは、自らの収入の減少に資金を出してほしいと頼むのと同じだ。そしてどの組織も、遅れは自分だけのせいではないと、正しく答えることができる。ストリーミングサービスは月ごとに報告し、著作権管理団体は四半期ごとに照合し、海外のパートナーは自分のスケジュールで動く。全員が上流の誰かを待ち、全員が待っている間に稼いでいる。

これは補助金付きの調整の失敗だ。ひとりでに解決することはない。

ロビー活動が必要だということが、その証拠だ

このシステムのどの層も、法律か契約によって存在しており、法律によるものは業界の要請で書かれた。

PROは、1941年に司法省と結んだ合意18のもとで運営されていて、それがいまも彼らのルールを定めている。そして1979年、最高裁は独占禁止法上の異議に対して、彼らの中核となる商品を支持した。放送局がひとつの料金で、彼らが管理するすべての曲を流せる一括ライセンスだ。デジタルの時代が来て、録音にはオンラインで流されることに対する支払いを受ける権利がなかったとき、業界は1995年にロビー活動でその権利を法律にした19。まったく新しい収入源が生まれ、その料率は業界が交渉する委員会が決める。ストリーミングによって複製の印税に穴があることが明らかになると、レコード業界とソングライターの業界団体はひとつの法案のもとに結束し、2018年の音楽近代化法(Music Modernization Act)20がMLCを生んだ。法律に書き込まれた集中管理団体で、データベースを持ち、そこにはレーベルと出版社がデータを入れる。

支出は、法律の動きに沿っている。RIAA21は2001年から2020年まで、米国でのロビー活動に年240万〜650万ドルを使い、2025年の第1四半期だけで250万ドル以上を使った。業界自身によるPROの説明22には、PROが「とりわけ法定印税率の議論において、権利者のためにロビー活動を行う」とある。約228の著作権管理団体を束ねる調整機関であるCISAC23は、その使命を「政策立案者に対するグローバルな声」を届けることだと述べている。

Fedwireの存続のためにロビー活動をする者はいない。DTCCの必要性を守るために年に何百万ドルも使う業界団体もない。本当に荷重を支えているインフラは、自分の存続を主張する必要がない。それを取り除けば、誰の目にもすぐにわかる形で何かが壊れるからだ。だから、ある層の立場が、自ら書き、年間予算を使って守っている法律に依存しているなら、その予算は、その立場のうちどれだけがサービスに基づいているかを教えている。

最も強い反例は、業界自身の改革であるMLCそのものだ。MLCは毎月支払っていて24、分配額は40億ドルを超える。これは本物だ。では、その改革が何を生んだかを見てみよう。法律に書き込まれた、もうひとつの仲介者だ。照合できないお金を抱え、それを市場シェアで分配し、残高を運用している。決済を直す機会を与えられた業界は、お金の上に座る新しい仲介者を築いた。共通の信頼できる情報源をつくろうとした以前の試みであるGlobal Repertoire Databaseは、800万ポンドを費やし、2014年に頓挫した25。資金を出すはずだった管理団体が手を引いたからで、その理由は明らかだ。共通の台帳は、自分たちが管理できない台帳だからだ。2つめの試みであるOpen Music Initiative26は、メジャー、Spotify、YouTubeの後押しを受けて2016年に始まり、そして静かになった。

仲介者は、門番ではなく、選べる層であるべきだ

これはどれも、仲介者に反対する議論ではない。彼らが何を売っているのか、そしてそれにどう値段がついているのかについての議論だ。

音楽の仲介者は、どれもサービスの提供者だ。レーベルも、ディストリビューターも、出版社も、著作権管理団体も、アーティストがひとりでは簡単にできない仕事をする会社にすぎない。レコードを1万の店に並べることが、その仕事だった。実績のないアルバムに先に資金を出すこと、3枚のアルバムにわたってアーティストを育てること、ラジオで曲を売り込むこと、映画や広告で曲を使えるよう権利処理をすること、200万曲を代表して放送局と一度に交渉すること。どれも本物のサービスで、置き換えるのは難しく、お金を払う価値がある。

緩んでしまったのは、仕事と値段の結びつきだ。仕事を勝ち取らなければならないサービス提供者は、その仕事に対して料金を取る。お金の通り道に座っているサービス提供者は、まだ何かをしているかどうかにかかわらず、1ドルごとに一定の割合を、永遠に取る。デジタルの流通は、その立場を正当化していた物理的な問題を取り除いた。それでも立場は残った。決済の通り道が、まだそこを通っていたからだ。

ここでいう交渉力とは、そういう意味であり、比喩ではない。交渉力は、ほかに行ける場所があることから生まれる。会社の連なりを通してしか支払いを受けられないアーティストには、その連なりから出る道がない。だから条件は連なりが決めたとおりになり、各層は実力ではなく初期設定によって取り分を保つ。この仕組みがこれほど長く続いてきた理由もそこにある。誰も異議を唱えなかったからではなく、異議を唱えても何も変わらなかったからだ。

パーミッションレスなインフラは、出口だ。誰の許可も求めずに、作品を公開し、配分を固定し、支払いを受け、それをすべての所有者へと決済できるアーティストには、通り道に仲介者を置く必要がない。部屋の中には、まだ誰かにいてほしいかもしれない。その2つの違いが、この議論のすべてだ。

出口ができれば、値段の形は変わらざるをえない。選ばれなければならないサービスは、ほかのどこでもサービスが売られているのと同じように売られることになる。サブスクリプション、プロジェクトごとの料金、仕事に対する報酬、契約が終われば終わる割合。1曲が将来稼ぐすべてのドルからの永久的な取り分は、サービスの値段ではない。立場の値段であり、アーティストが離れられない場所でしか成り立たない。

私たちは、それが具体的な方向へ向かうと考えている。ここから先は発見ではなく予測だ。お金を動かすことが残された唯一の機能である層は、お金が自ら動けるようになれば、売るものが何もなくなる。そうした層は薄くなっていくと、私たちは見ている。残るのは貢献だ。レコードに資金を出し、それに本物のリスクを取るレーベル。センスと人のつながりを持つ人たち。アーティストがひとりでつくるよりも良いものにするチーム。その仕事にはお金を払う価値があり、中立なレールの上では、座っている場所ではなく、貢献したものに対して支払われる。

その結果は、料金所に頼っている者にとっては不利になる。だから彼らがそれを築くことはない。それは既存の機関の外から来なければならない。だからこそ答えは、委員会ではなく、プロトコルなのだ。

回避策が、その証拠だ

人々は、このシステムを迂回するために3つのものをつくった。そのそれぞれが、何が壊れているかを教えている。

**国境を越える場合。**ここまではすべて、国内の場合の話だ。国際的には、111の国と地域にまたがる約228の管理団体27が、二国間の協定でつなぎ合わされていて、その一部は1920年代に結ばれたものだ。ドイツでの1回の再生は、ドイツの著作権管理団体を経由し、次に作家自身の国の団体へ、次に出版社へ、次にその出版社の各国のパートナーへと渡り、そのたびに取り分が引かれ、何か月も加わっていく。国際的な印税は、源泉税と通貨の換算を経て、一般に12〜18か月7かかる。複数の国にまたがるライセンスについての欧州の2014年の指令28は、国ごとの仕組みでは国境のないストリーミングに対応できないからこそ存在していて、それはモデルを捨てるのではなく、何百もの地域をまたいで仲介することで問題を解決した。インターネットは聴くことから国境をなくした。ラゴスのファンもベルリンのファンも、同じファイルをストリーミングで聴いている。国ごとのまま残ったのは決済だ。Cloudflareは開発者にデータセンターを選ばせるのをやめ、ネットワーク全体を「Region: Earth」として扱っている29。音楽のお金も、一度で、どこでも決済されるべきだ。

**直接購入。**販売ならこのすべてを避けられるはずで、最初の区間では実際に避けられる。Bandcampでアルバムを買えば、お金は1〜2日のうちに販売者の口座に届く。公表されている手数料は、デジタル販売で15%、5,000ドルを超える分は10%だ30。だが、そこで止まる。Bandcampが支払うのは、ひとつの口座だ。4人でレコードをつくった場合、プロデューサーに一定割合を支払う約束がある場合、曲と録音が別々の人のものである場合、Bandcamp自身のヘルプ31には、共作者たちがBandcampの外で自分たちで分けるようにとある。分配は、アカウントを管理している人の仕事になり、ほかの全員に手作業で支払うことになる。音楽の世界で最も速いお金でさえ、システムが実行できない分配で行き止まりになる。

**待ち時間をアーティストに売り戻す。**beatBread、Amuse、Sound Royalties、Symphonic、Unchained、SongVestは、どれも、すでに稼いだのにまだ支払われていない印税を担保に、アーティストにいま一括でお金を渡す。Amuseだけで5万件以上32を実行していて、利用者は平均して4回戻ってくる。これは顕在化した需要であり、その値段をつけているのは、未来が見えず、だから低く賭ける者だ。その差額は貸し手が手元に残す。Unchainedはそのモデルを率直に述べている33。「実際の音楽印税の額と、予測した収益との差額」で稼いでいる、と。アーティストは自分のお金を割り引かれた額で早く受け取り、その必要を生んだ遅れは、まったく元のままそこに残る。

なぜ、いまそれを築けるのか

問題は100年前からある。3つのことが同時に変わった。

**材料が、本番で使える水準になった。**公開台帳での決済が、1回の再生や1回の購入の金額にも使えるほど速く、安くなった。そして価値は、値動きの大きい暗号資産ではなくドル建てでオンチェーンを動けるようになった。規制されたステーブルコインがそれを可能にした。アーティストはドルで考える。レールはドルで決済できる。その一方で、金融のほかの分野は速い決済を当たり前にした。米国の証券は2024年にT+1へ移行し34、FRBは即時決済を始めた35。それと並べると、四半期ごとの印税明細は骨董品に見える。

**使う人たちが、自由に採用できる。**いまや何百万人ものインディーのアーティストが、既存のパイプラインの外で活動し、自分の原盤を所有している。インディーはすでに、Spotifyが支払う100億ドル超の印税の約半分を生み出している4。彼らは、どのレーベルやどの管理団体が何かに同意するのを待つことなく、下から新しいレールを選べる。調整の失敗を越える唯一の方法は、それを迂回することだ。

**エージェントには、決定論的な決済が必要だ。**音楽には2種類のAIがやってきている。ひとつは曲を生成し、もうひとつはビジネスを動かす。壊れているのは管理の部分で、エージェントはそれを動かすのに向いている。だが、エージェントはループで動き、各呼び出しの結果が次の一歩を左右する。そのためには、決定論的で時間の区切られた操作が必要だ。呼び出せば、いま成功するか失敗するかが決まり、読める結果が返ってくる。従来の決済はその正反対で、APIで包んでも役に立たない。APIは同じ泥沼の上で「保留中」を返すだけだからだ。

私たちが築いたもの

Misoは、そのレールだ。

作品の所有権は、公開チェーン上に、供給量が固定された持分として記録され、権利の構造は、あとから組み立て直されるのではなく、オブジェクトそのものに組み込まれている。Recordingをつくると、Compositionの変更できない取り分が、録音の持分の所有として付与される。Releaseは、平坦で順序の決まったトラックリストと、各当事者に支払われるべき正確な割合を保存し、それはお金が動く前に確定する。所有の関係図は最初の1ドルより前に存在していて、これは上で述べたすべてが依存している順序を逆にする。決済は、業界があとから解釈しなければならないものではなくなる。

Releaseに支払いがあると、その支払いはそのオブジェクトのアドレスに届く。その管理権限がVaultに保持され、収益プラグインが導入されていれば、誰でも次の段階を進められる。変更できないトラックの配分が価値をRecordingのアドレスへ送り、Recordingのプラグインがその残高を印税プールにまとめ、Compositionが所有する録音の持分はその報酬をCompositionのプールへ回すことができ、持分の保有者はプールから受け取る。各段階は完全に完了するか、まったく起きないかのどちらかで、行き先は作品自身から取られる。だから呼び出す者は決済を進めることはできても、行き先を変えることはできない。

2つの限界を、率直に述べておく。このライフサイクルは段階的だ。支払いがあっただけで、ひとつのトランザクションの中で全員にお金が押し出されるわけではなく、受け取りは引き出す方式のままだ。そしてこのレールは、当事者たちがつくったオブジェクトと配分を強制するものだ。誰がその曲を書いたのかを裁定するものではない。

このレールが取り除くのは、裁量の隙間だ。あなたのお金がいつ動くかを決める層はない。あなたに見えないスケジュールもない。誰も公表していない最低額を下回ったまま抱えられる残高もない。管理者のために利回りを生む、照合できない資金のプールもない。預け入れは見えていて、次の行き先は作品自身のアイデンティティによって固定され、導入された送金の段階は誰でも進められ、保有者は自分で確かめられるプールから受け取る。

レールこそが、プロダクトだ

音楽に必要なのは、少し早く支払うと約束する、もうひとつの仲介者ではない。お金がそもそも足止めされることのないレールであり、残る層が、通り道に立つことではなく役に立つことで、その場所を勝ち取るレールだ。

100年の間、障害は次のことだった。共通の信頼できる情報源をつくるには、互いに競い合う機関に、相手の帳簿を信頼するよう説得しなければならない。つまり、そのうちのひとつが大きすぎて潰せない存在でなければならず、つまり、台帳と中抜きは常に同じ資産だった。その制約は、もうない。ルールがコードで書かれ、状態を誰でも検証できる公開台帳は安価で、配分、送金、受け取りは、その上で動くプログラムだ。欠けていたのは、支払いではなかった。決済レールは何十年も前から存在している。欠けていたのは、曲とは何かを知っているレールだった。

脚注

  1. Wikipedia (DTCC) · Depository Trust & Clearing Corporation · 米国株におけるNSCCのネッティングと保証、DTCの帳簿上の決済。 ↩

  2. Federal Reserve Financial Services · Fedwire Securities Service · 米国債の帳簿上の移転と証券資金同時決済(DVP)。 ↩

  3. CLS Group · CLSSettlement · 資金同時決済(PVP)による外国為替の決済。18通貨で1日8兆ドル超。 ↩

  4. Spotify · Royalties guide · 自己申告の収益配分、1,000回再生の支払い対象基準、最低出金額による取り残し、インディーのアーティストへの支払いの割合。(配分の割合はMIDIA Researchの推計。約70/30というプラットフォームの枠組み、1,000回再生の基準、最低出金額による取り残し、インディーのアーティストについての数字は確立した事実。) ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  5. BMI · Creator resources · 公表されている四半期ごとの印税支払いスケジュール。 ↩

  6. Music Business Worldwide · BMI’s for-profit margin increase · 2022年の営利企業への転換により、BMIが手元に残す割合は約10%から15%に上がった。 ↩

  7. BMI · International royalties FAQ · 「このプロセスには、発生国によって12〜18か月かかることがある」。BMIは現行ページを廃止しており、リンクは2026年5月9日のアーカイブ。 ↩ ↩2

  8. ASCAP · Money from recording · レーベルがアーティストへの支払い前に差し引くもの。返品に備えた留保、販売数の90%分しか支払わない条項、過去のアルバムの未回収アドバンス。 ↩

  9. DistroKid · Pricing · 定額制のDIY配信。ストアの収益に対する手数料0%で、競合は約9%まで。 ↩ ↩2

  10. Investopedia · Float · フロートの一般的な仕組み。移動中のお金を、保有者が転送する前に運用できること。 ↩

  11. Billboard · SoundExchange 2017 financials (IRS filing) · SoundExchangeは、預かっている印税から得た投資収益を管理手数料と相殺している。 ↩

  12. ASCAP · Royalties and payment · 投資収益は、会員に分配されるプールに組み込まれる。 ↩

  13. Hypebot(MLCのIRS Form 990についての報道)· The MLC, holding $1.2 billion, turning into a hedge fund? · 書類を読んだ批判者は、MLCの運用証券の保有が10億ドルを超えると見ている。MLCを擁護する側は、その数字には照合済みで未分配の印税と運営準備金が、本当に照合できていない資金と混在していると述べている。(異論あり。批判者の見方として記載) ↩

  14. US Treasury · Daily Treasury Par Yield Curve Rates · 安全な短期の政府貸付の利回り。約4%。 ↩

  15. Wikipedia · Maturity transformation · 継続的な流入で近い期日の債務をまかなう、銀行の仕組み。 ↩

  16. The MLC · MLC receives over $424M in unmatched black box streaming royalties · 発足時にMLCへ移された、過去の照合できない印税の残高。 ↩

  17. U.S. Copyright Office · Unclaimed royalties: report and recommendations · 照合できない印税の市場シェアによる分配。最初の分配は2028年より前には行われない見込み。 ↩

  18. Wikipedia · Broadcast Music, Inc. · 1941年の司法省との同意判決と、一括ライセンスを支持した1979年の最高裁判決。 ↩

  19. Wikipedia · Digital Performance Right in Sound Recordings Act · 録音物にデジタル演奏権を創設した1995年の法律。 ↩

  20. Wikipedia · Music Modernization Act · MLCを創設した2018年の法律。 ↩

  21. Wikipedia · Recording Industry Association of America · RIAAの米国での年間ロビー活動費。 ↩

  22. Wikipedia · Performance rights organisation · 法定印税率についてのPROのロビー活動の役割。 ↩

  23. CISAC · CISAC · 「政策立案者に対するグローバルな声」というCISACの掲げる使命。 ↩

  24. The MLC · The MLC · 毎月の分配と、累計40億ドルを超える分配額。 ↩

  25. Music Business Worldwide · Who will build the music industry’s global rights database? · 約800万ポンドを費やしたあと、2014年に頓挫したGlobal Repertoire Database。 ↩

  26. Wikipedia · Open Music Initiative · 2016年に始まった、オープンAPIによる権利データの取り組み。 ↩

  27. CISAC · CISAC Global Collections Report 2025 · 111の国と地域にまたがる228の会員団体。 ↩

  28. UK legislation (EU Directive mirror) · Directive 2014/26/EU · 複数地域ライセンスについてのEUの指令。 ↩

  29. Cloudflare · “Region: Earth” · ネットワークをひとつのグローバルなリージョンとして捉えるCloudflareの考え方。 ↩

  30. Bandcamp · What are Bandcamp’s fees? · デジタル販売の手数料15%、5,000ドルを超える分は10%。 ↩

  31. Bandcamp · Do you support split payments for collaborative releases? · 共作者は、Bandcampの外で自分たちで支払いを分けなければならない。 ↩

  32. Amuse · Amuse surpasses 50,000 automated royalty advances · AmuseのFast Forwardによるアドバンスの規模と再利用。 ↩

  33. Unchained · Advances · 予測した印税と実際の印税の差額で稼ぐという、Unchainedの掲げるモデル。(推計) ↩

  34. Investor.gov (SEC) · New T+1 settlement cycle: what investors need to know · 米国の証券決済は、2024年5月28日からT+1に短縮された。 ↩

  35. Federal Reserve · About the FedNow Service · 2023年7月に始まった即時グロス決済。 ↩

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2026年10月18日 · 9分で読めます

ファンとアーティストの間に立つのは誰か

Spotifyの月額料金ひとつを、曲をつくった人たちのところまで追いかける。間にいる5社のうち2社は、お金を動かしているだけだ。レーベルと出版社は本物の創作の仕事をしているが、著作権も持っていて、その力はそこから来ている。

2026年10月18日 · 9分で読めます

音楽に国境はない。印税にはある。

ベルリンでの1回の再生、米国のソングライターがひとり、2つの国の管理団体、そして1年以上。音楽は一瞬で国境を越えるが、お金はそこで止まる。